自業自得 吉田君の試練


 闇金で金借りて、返さなかったら恋人を売るぞと脅されて、男だし別にいいやって思ったから、恋人売ってくださいとお願いして逃亡し、またとっ捕まって恋人に裏切られ、俺は風俗店に売られた。
 人は自業自得だと言うだろう。ぶん殴られても、爪剥がされても、ゲイ専用の風俗店で働くことだけは避けたかった。
 拘束されてる中、頑張って抵抗して見せるも、俺を捕まえている強面のおっさんは微動だにせず、「コイツが例の」とド派手な金髪の兄ちゃんと話している。コイツが、ゲイ専用風俗店の店長だろうか。俺を見るなりに、ニィと笑う。怖い怖い。助けて怖い。男と付き合っていた俺だけど、バイでタチだったから、掘られるなんて真っ平御免だ。逃げ出そうと試みるも、がっちり首根っこつかまれてるせいで、逃げることなんて出来なかった。
 次、逃げたら、東京湾に沈めるって言われてるし。
「生きがいいねぇ。うんうん。ま、顔はぶっさいくだけど、仕込めば何とかなるかな?」
 そこそこイケメンの金髪の兄ちゃんは俺の顔をじろじろ見るなりにそう言った。俺が、不細工、だと? コイツの目、可笑しいんじゃねぇかと思ったが、殴られてフルボッコにされたんだ。不細工に見えても仕方ない。
「何とかするのが、お前の役目だろう」
「へーい。ま、うちでお預かりさせていただきますよーっと。金額は一千万だっけ。道のり長いねぇ。三人とか四人とか、沢山のおじさんたち相手したら、あっという間に返せるかもしれないけど。最初からそんな大人数相手にしたら、括約筋擦り切れて、人工肛門コースだからなぁ。どうしよっか」
 金髪が、俺を見て笑う。いやいや、笑い事じゃねーから。つーか、俺、おっさんの相手とかする気ないから! と叫びかけるが、ガムテープで口を塞がれてて喋れる状態じゃなかった。さっきまで、嫌だ嫌だとわめいていたせいだろうか。強面のおっさんは、大声を出す俺に呆れた顔をしていた。未だに人差し指の爪剥がされた痛みが忘れられず、この人がいるとびくびくしてしまう。ぶちゃけ、俺はチキンだ。
「とにかく、お前に任せる」
「はーい。あ、そうだ。八坂さんに伝えててほしいんだけど。平沼さんが来るとみんな怖がっちゃうから、今度は八坂さんが来てねって」
 ニコニコ笑いながら言うことか、それ、と思いつつ、俺は怖いと言われた平沼とやらを見る。確かにこの人、すんごく怖い。足が遅そうなのに、追いかけてくるときめっちゃ足速かったし、捕まったときは殺されるかと思った。殴られたりしたときも、ぶっちゃけ殺されるかと思ったけど、殺されなくて良かったー……。
 強面のおっさんから、金髪の兄ちゃんに俺は引き渡され、店の中へと引きずり込まれていく。どこからか聞こえる、あんあんと喘ぐ声。かなり血の気が引いた。俺ってもしかして、とんでもないところで金借りて、とんでもないこと、してしまったんじゃないだろうか。細い階段を上がり、店の三階へと行く。ピンクを基調とした壁から、いっきに生活感の溢れるフロアへ移動され、俺は周りを見渡す。もしかしなくても、このビル一つ、この人のもんなんだろうか。横幅はないけど、縦幅はかなりあった。
 つーか、どこまで連れて行かれるんだろう。胴に巻かれた縄を引っ張られるから、歩きにくくてしょうがない。部屋の奥まで連れて行かれ、「縄、解くねー」と言い、金髪の兄ちゃんは胴に巻かれている縄を解いた。その隙に逃げ出してやろうと思ったが、がっちり腕を捕まれ、ニコニコと微笑まれる。これは逃げたら、やばい系? 俺もニコニコと笑い返してみた。
「お前、逃げたらどうなるか、分かってんだろうな?」
 笑顔なのに、ドスを利かせた声でそう言うから、俺はコクコクと頷く。さっきの強面のおっさんより、怖いかもしれない……! どうしよう、俺、逃げたくなってきた。
「とりあえず、浣腸から、覚えようか」
 笑顔でそう言う金髪の兄ちゃんは、悪魔のように見えた。
「あ、口塞がれてんのね。ガムテープ剥がしてやんけど、俺に向かって変態だの暴言吐いたって、俺にとってはご褒美だから。意味無いよ」
 笑ったまま、兄ちゃんは俺の口を塞いでいるガムテープを剥がす。思いっきり剥がしやがったせいで、髭が何本も抜けて痛い。「いてぇ!」と叫んだら、思いっきり頬を殴られ、涙目になる。どうして、俺、殴られたの。
「誰が喋って良いって言ったんだよ」
 この人、強面のおっさんより怖い!! 俺は涙目になりながら、その兄ちゃんを見つめる。怖いよ、怖いけど、逆らったらもっと怖い目に遭うから、俺は次の指示を待つ。人間って力の強い人には従順しちゃうんだよね。あぁ、俺って弱い生き物だ。最初から知ってたけど。
「っていうのは嘘ね。とりあえず、逃げたら、ぶっ殺すから。覚えておいて。俺もね、色々大変なんだよー。バックに色々付いてるとね。君の不祥事は俺の責任でもあるから、変な事したら容赦しないからね」
 兄ちゃんはニコニコと笑いながら、そう言う。殴ったのは、見せしめ? いや、きっと、体に恐怖を覚えさせるつもりなんだろう。さっきのヤクザの人も、似たようなこと言ってた。怖い。剥がされた爪がジンジンしてる。痛くて泣きそうだ。でも、できるだけ泣かないように頑張る。
「返事は?」
 笑顔で尋ねられ、俺は素直に「……はい」と返事をした。
「じゃぁ、まず、服を脱いで。あ、自分でな? ちゃんと色っぽく脱げよー。じゃないと、客はいんねーから」
「え、あ、色っぽく!?」
「まぁ、最初は無理か。とりあえず、脱げ」
 マジで脱ぐの? って顔をすると、兄ちゃんが拳を握ったから、俺はそそくさと脱ぐ。殴られたり蹴られたりしてまで、抵抗する気はもう無くなっていた。痛い目に、十分、遭った。あぁ、よく考えたら、見捨てちゃった昴に謝ってないなとか、思ったけど、見捨てられたからもういいや。。ま、俺が悪いんだけど。ボロボロのシャツを脱ぎ捨て、ベルトに手を掛ける。下を見ると、兄ちゃんと目が合った。俺をジッと見つめている。え、そんなガン見されてん中、脱ぐの? ちょっと恥ずかしいんだけど。その目線、超エロいんですけどぉ。
「早く脱げよ?」
「え、あ、はい……」
 ベルトを外して、ズボンのボタンを外す。あと、下ろすだけ。ズボンとパンツ、下ろすだけなのに、手が中々動かない。震えていた。俺、またビビってんだなと思った瞬間、兄ちゃんの手が俺のズボンとパンツを掴み、思いっきりずり下ろした。
「やーっぱり、強硬手段に出なきゃダメだな。うん。よし、覚悟しろよー」
「え、あ、へ!?」
「抵抗しないように腕とか手錠掛けちゃうけど、気にすんなよ」
「します! 超します!」
 腕を後ろに回され、床に押し倒される。なんか警察に捕まった犯人みたいな格好で、かちゃんと金属の擦れる音がした。マジで俺、手錠掛けられた? 何で拘束されてんの? 冷や汗がダラダラと流れてくる。両手を拘束され、風呂の中に引きずり込まれる。冷たいタイルが頬や腹にくっついて、ちょっとだけ寒かった。まだ9月の初めなのに。何をするのかと体を起こすと、兄ちゃんの手にはイチジク浣腸。マジで、マジでそっからするんかよ。
「はーい、息吐いてー。吐かなかったら、無理やりにでも吐かせるからねー」
 仕方なく息を吐き出す。そのタイミングを見計らって、ブスリと尻に衝撃を感じた。息を詰まらせてしまうと、「吐けよ」と声が上から降ってくる。殺される、と思いながら、俺は必死に息を吐いた。尻の中に入ってくる液体が、便意を誘ってくれる。やばい。漏れる。超漏れる。
「とりあえず、5分我慢な」
「……え」
 既に腹が痛くて死にそうなのに、5分我慢とかできるわけ無い。「む、り……」と死にそうな声を出す。アハハ、と笑い声が上から聞こえた。何だ、このドS。超怖いんですけど。
「あ……、う、ああああ、無理! 出る! 出るってばあああああああ!」
「うっせぇな。黙らすぞ」
「ごめんなさい! でも無理! お願い、お願いイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」
 ちょっと出たら、止まんなかった。そりゃぁもう、恐ろしいぐらいの大惨事になり、一通り出し終わると、上から水をぶっ掛けられる。まだ気候は夏だから、水は生ぬるいけど、まっぱで水ってかなりの拷問だった。ヤクザの事務所に連れてかられたときも死ぬかと思ったけど、ここにきても、俺は死ぬかと思った。水をぶっ掛けて遊んでるだけだと思ってたが、兄ちゃんは綺麗に俺の体を洗ってくれた。床をはいつくばって命乞いした汚れも、殴られて血が飛んだ後も、全部、水と一緒に流れていく。俺の感情も、それと一緒に流れていってしまう気がした。兄ちゃんが俺の肩を掴んで、仰向けにさせる。顔に思い切り水をぶっかけられ、窒息死するかと思った。鼻に水が入って咽ると、ケラケラ笑う。顔を見たら、純粋に楽しんでいるようだった。
 ……このドSめ。
「体はまぁまぁ、ちんこもまぁまぁ……。んー、店で売るよりもなぁ……。うんうん」
「……何を考えてるんですか」
「うっせー、しゃべんな」
「はい……」
 生ぬるかった水が、温かい水に変わり心地よくなる。足首をつかまれ、体をくの字に曲げられた。ケツの穴を見せびらかしてるような体勢が、恥ずかしくてたまらない。顔を横に向けて、羞恥に耐える。喋ったら、きっと殴られる。兄ちゃんはじろじろと俺の股間周辺を眺め、「思った以上に綺麗」とか呟きやがる。何それ、初めて聞いたんですけど!
「男とヤったことあんだよな?」
「はい」
「へぇ、その割には綺麗」
 そう言いながら、兄ちゃんは人差し指で俺のケツの穴をツンツンとつつく。
「……いや、俺、タチだったんで」
「あぁ、なるほど。それでか。じゃぁ、ここ使うのは、今日が初めてってことになるな」
 笑顔で、兄ちゃんがそう言う。
「……え、使うんですか?」
「もちろん。お前、ここをどこだと思ってんの?」
 ここがどこだかちゃんと分かってる。ゲイ専用の風俗店だろ。知ってるよ。知ってるけどさ、俺がまさか、ケツの穴使うが来るなんて思わないじゃん。入れるのがどれほど気持ちいいのか知ってんだぜ。出来るわけないじゃん。何考えてんのって思ったけど、それは言葉に出せなかった。殺されると思ったから。
「これからお前が覚えることは、べろちゅー、手扱き、フェラ、まぁバカにはおぼえらんねーかもしんねぇけど、色々仕込まなきゃ使えないわけよ。それをまぁ、そうだな。2週間ぐらいで覚えてもらうつもりでいるんだけどさ」
「無理!」
「無理、じゃねーんだよ。やんなきゃいけないの。分かる? これ、ビジネスだから。遊びじゃないのよ」
 そう言って、兄ちゃんはシャワーのヘッドを外し、ホースみたいにする。これから、何をするんだろうか。想像したくない。分かってしまっただけに、何も考えたくない。
「とりあえず、中、空っぽにしようか」
 笑顔を向ける兄ちゃんに「いやあああああああああああああああ」と叫んで、殴られた。

「お前の名前は?」
 手錠を掛けられたまま、風呂から出され、バスタオルで体を拭かれ、ベッドに押し倒されながら兄ちゃんは俺にそう尋ねた。
「吉田、剛」
「ふぅん、吉田ね。俺は結城。結城、さんって呼べよ」
 命令口調でそう言われ、俺は頷く。まぁ、さん付けするつもりなんか、更々無いんですけどね。見っとも無い姿を曝け出した俺は、もう羞恥心なんかどこかに吹っ飛んでしまった。ケツん中を洗われているときに、2、3人、人がやってきて「おー、新人。見ていけよ」と結城が誘ったので、じろじろと羞恥プレイさせられた。くすくすと笑われ、涙目になってる俺を嘲笑った奴ら、覚えとけよ。顔、忘れないからな。後で殴ってやる。しくしくと泣きそうになりながら、俺は枕に顔を埋める。うつ伏せに寝かされたけど、これから何をされるんだ。
「えっと、お前、ケツの処女、バイブで奪っちゃうけど良い?」
「え!? え……、ええええええええええ!」
「うっせぇな。お前の答えは二つだけなんだよ。イエスかノー。さぁ、どっちだ」
 頭を枕に押し付けられていては、結城がどんな顔をしているのか分からない。また、笑っているんだろう。あの悪魔のような笑みを向けて。ノーって答えたら、どうなるんだろう。イエスって答えれば、まぁ、バイブ突っ込まれちゃうんだけど。つーか、いきなりバイブってオッケーなん? 俺、そんなの受け入れらんないんですけど。
「……嫌だ」
「よし、分かった。じゃぁ、俺のを突っ込んでやる」
「はあああああああああああ!?」
「ありがたいと思えよ? 滅多にないサービスなんだからな。普通の奴だったら、問答無用でバイブ突っ込んであんあん言わしてるところなんだから。ちゃんと、リップサービスもしろよ」
「リップサービスって何だ!」
「んー、アレだ。きもちー、ああんああん、結城さんのおちんぽしゅごいのおおお……、アッーーー!!! とか?」
「言えるか!」
 何だそれ! エロゲの世界はエロゲの世界でとどめておけ! と言いそうになったところで、「お前、さっきから誰に口利いてんか分かってんの?」と冷たい声が降ってくる。怖いよ、この人。さっきまでふざけてたと思ったら、これだよ。俺は素直に「ごめんなさい」と謝って、枕に顔をもっと埋める。いきなり腰を持ち上げられ、ケツを突きだすような体勢になると、何か冷たいもんがぶっかけられ、指が一本、中に入ってきた。ただのローションかと思って、「うわ!」と叫んだら、「色気ねぇな」と笑われる。うるさい。俺に色気なんてものがあるはずがない。そう言いたくなったけど、黙ってその屈辱に耐える。逆らったら、酷いことをされそうだから。
 ずぶりと、ケツん中に指が入ってくる。気持ち悪い。どうしよう。ここで、オエーとか言ったら、蹴られたり殴られたり、挙句の果てにはもっと酷いことしてくんだろうなーと思いつつ、俺は枕に顔を埋めていた。どう反応して良いか分からなくなってた時、なんかケツがジンジンしてきた。何だろ。熱い。ケツが超、熱持ってる。
「どう? よくなってきた?」
「なんか血行良くなってきたかも」
「実はコレ、媚薬入りローション。超気持ちよくなっちゃうよ」
 あはは、と笑い声が聞こえ、俺は「ええええええええええええ!!」と叫ぶ。何だよ、このジンジンとしてるの血行が良くなったんじゃなくて、媚薬のせいか! いや、血行も良くなってきてるんだけどさ。膝が笑って体を支えることができない。どうしよう。超、中が熱い。超、熱い。
「うぁ、なんか、あつっ……、あつい……!」
「色気のねぇ喘ぎ声だな。もっと色っぽい声出せよ。客がつかねーぞ」
 そう言い切ったと同時に、結城が俺のケツを叩く。ペチンと良い音を立て、ケツがビクンと跳ねる。叩かれただけでも、感じてる俺ってマゾじゃん。ぐちゅぐちゅと、音がやたらと響いている。中からも、外からも。今、指が何本、俺のケツん中入ってるのかすら、分かんない。
「うっ……、ぐっ……、あ、づっ……、ちょ、もう、取って」
「はぁ? 何をだよ。何もねぇよ」
「あつっ……、あづい、んぁああ、うわ……、なんかきもち、わるっ……」
「気持ち悪いじゃねぇだろ? 指、三本も銜えといてよく言うよ」
 指が奥まで突っ込まれ、燻ってる様なもどかしい位置をゴリと刺激する。目の前で電気がぱちぱちした。何も考えられず、俺は枕に顔を押し付ける。だらしなく開いた口から、涎が垂れてしまっていた。ケツが、熱いを通り越してかゆい。
「気持ち良いなら、ちゃんと気持ち良いって言え。まぁ、相手にヤってもらってるなら、気持ちよく無くても気持ち良いって言わなきゃいけねーんだけどな。お前に抱かれてた男も、気持ち良いって言いながら、実は感じてなかったりするかもしれねーぜ?」
 結城の指が、内壁をなぞる。背筋から快感が襲ってきて、背中をのけぞらせてしまう。気持ち良いのか、気持ち悪いのか、この襲ってくる衝動が何なのかすら分からない。もう、あんま考えられなかった。
「おら、吉田。ちゃんと言えよ?」
「ん、あっ……、もう、んんっ……、づっ、あっ……!」
「女の喘ぎ声だって聞いたことあんだろ? もうちょっと可愛らしく喘げよ。ほら」
 中から腹を押されて、俺はイってしまった。前なんか、1回も触ってもらってないのに。体が跳ねて痙攣する。こんなイきかたしたの、生まれて初めてだった。何が起こったのか分からないし、目が熱いなって思ったら、いつの間にか涙を流していた。これが気持ち良いなら、かなりの拷問だ。息を切らしながら、背後に居る結城を見る。俺はもう真っ裸だっつーのに、結城は服を着ている。すげぇみすぼらしい姿だ。何か無性に泣きたくなって、枕に顔を埋める。腹がぐちょぐちょで気持ち悪い。
「あれ、もうイったのか? イくならイくってちゃんと言えよ」
 パシンとケツを叩かれる。
「次、無断でイったら、チンコ縛るからな。……返事は?」
 苦し紛れに、俺は「……あい」と返事をする。結城は俺の腕を掴んで無理やり起き上らせると、自分のズボンの前を開き、萎えているペニスを顔に押し付けた。舐めろってことか。それぐらいは言われなくても分かったから、素直に口に含む。さっきイったばかりなのに、何でか知らんけど、俺のチンコはすげー勃起してて、腹に付きそうになっている。こんなに勃起したの、中学生ぶりぐらいだろうか。もう忘れてしまった。
「お前、フェラも下手くそかよ。つっかえねぇ奴だなぁ」
 頭を掴まれ、思い切り喉に突っ込まれる。これ、フェラじゃなくて、イマラチオ……、と思いつつ、俺は必死に舐める。もう、これしかすることがないから仕方ない。プライドだとか、そんなちっぽけなもん、昴に頭を下げた時点から無くなっていた。どんどん口の中で大きくなっていく結城のペニスは、もう、喉の奥まで達して苦しくて吐きそうだ。呼吸困難になる寸前で、解放された。
 息を切らしてベッドに仰向けで寝転がる。苦しい、熱い、もうどうにでもなーれ状態の俺は、力を抜いて結城を見る。
「手錠、外してやろっか」
 俺はこくんと素直に頷く。逃げたりなんかしないから、手錠を外してほしかった。素直に頷いたのが良かったのか、結城はにっと笑って「外すわけねぇだろ?」と言う。なんてひどい奴。俺は涙目になって、結城を見上げた。期待させるだけ期待させて、外さないってどういうことだよ。俺、完全に遊ばれてるじゃねぇか。そんな意味でも泣けてきて、唇を噛みしめていると結城がブッと噴出して笑う。大爆笑だ。
「お前、おもしれーし、可愛いな。気に入ったわ」
 嬉しく無くて、俺は「あっそう」と言ってしまう。結城の目の色が変わって、俺の足を掴むと思いっきり開く。体が固いから、痛くて仕方ない。苦しんでいる俺の姿を見て、結城が笑った。
「本当はもっとひでーことしてから入れようかなって思ったけど、気が変わった。楽にしてやるよ」
「……え?」
「ま、こっからが地獄かもしれないけど」
 そう言って、なんか固くでデッケーもんが、俺の尻に当てられる。ちょ、マジで入れんのかよ、と思った時にはすでに、入ってきていた。括約筋に力を入れてしまい、侵入が途中でストップする。それでも結城は無理やり、俺の中に入ってくる。デケェしいてぇ。何だこれ。爪剥がされた時と同じぐらい痛いかもしれない……! そんときの痛みなんか半ば忘れてしまっていたから、今のところ、この痛みが一番つらかった。額から、脂汗が流れてくる。
「おら、力抜け」
「む、りっ……!」
「もっと痛い目に遭いたいのか?」
 真顔でそう言われ、俺はゆっくり力を抜いたのに、結城は思いっきり突っ込んできやがった。熱いとかかゆいとか通り越して、マジで痛い。目から涙が零れ落ちて、頬を伝って行く。俺がこんな痛い目に遭ってるのも、全部自業自得だ。ちゃんとしてれば、こんな風にはならなかったし、こうやってドSの変態に犯されることもなかった。これから毎日、こんな日々が続くのかと思うだけで死にたくなる。俺が生きている意味って、無いかもしれない。
「やっぱり、処女のケツは違うな。締まりが良い」
「……うっせ、しょ、じょ、じゃねぇし……」
「ま、そうだな。じゃぁ、アレか? ケツ童貞か? ま、どっちでも良いけど。動かすからな。ちょっと痛いけど、我慢しろよ」
 どっちでも良いわ、と突っ込む余裕なんてなかった。いてぇ、動くと超痛い。何これ、拷問かよ。いや、まぁ、俺、突っ込む側だったけどさ。こんなに痛かったんだね、入れられる側って。すみませんって気持ちになった。昴もこんな気持ちだったのかな。いや、アイツはなんか慣れてたから違うだろ。気持ちよさそうだったし。でも、アレって演技だったのかな。うわ、なんか凹んできた。
「おい、お前、集中してねぇだろ」
 バシンと思い切りケツを叩かれる。いってぇ、いてぇけど、なんかあれ、気持ちよくなってきた? かもしんない。さっきからケツん中の熱い所に、結城のアレがぶつかって気持ち良いかもしれない。気のせいかもしれないけど。気付いたら、「う」とか「え」とか、声が出ちゃってる。さっきとは違って、高い声。
「し、てる……、つもり」
 確かに集中してなかったけど、本当のことを言えば怒られそうだから、ちょっとだけ嘘を吐いちゃう。気付かれてたみたいだけど、結城は少し笑って「あっそ」と言う。大きく広げられた足。無様にも男に突っ込まれてる俺の姿。あー、すげぇ見っとも無いんだろうなって思ったけど、かなり気持ちよくなってきてて、どうでも良かった。すっげぇ、イきたい。
「んっ、あっ……、ぐっ……、イきそっ……」
「はぁ? はえーな。若さって奴かー? イきたかったら、イかせてください結城様って呼べよ」
「だ、れがっ……」
 言うかって思ったけど、がっちり根っこ掴まれてたら、イけないじゃん。サーと血の気が引く。ケツからダイレクトに伝わってくる衝動が、気持ちよくてたまらない。薬のせいだろう。耳かきしてて、かゆいところに到着したような、そんな心地よさがある。気付いたら、沢山の涙が出てた。よだれもちょっと垂れてる。
「すっげぇ気持ちいいだろ? 俺の、超締め付けてる」
「……は、んぁ」
 そんなに締め付けてるつもりは無いんだけどな、と思いつつ、それが言葉にならない。激しく動かされてるのに、もう痛くないし、先走り一杯出てるから、結城の手が汚れてた。ダメだ。イきたい。
「あっ、イかせっ……て……」
「もっと可愛くお願いしろよ」
「あ、ああん、あん、イかしぇてー」
「ふざけんなよ、お前」
 パシンと頬を叩かれ、俺は涙目で結城を見る。いや、もう結構前から涙目だったけど、俺なりに頑張ったのに、怒られると思わなかった。俺がどれぐらいイきたいのか、握り締めている結城は良く分かっているはずだ。動きが止まり、息も切れ切れに結城を見る。もう、空気が足りない。吸っているはずなのに、酸素が吸えてないみたいで苦しかった。口から、涎が垂れる。
「今の、真面目にやった?」
 俺は首を縦に振る。
「ぶはっ、マジで? かっわいくねぇお願いの仕方だなぁ。まぁまぁ、それはこれから覚えていけばいいわ。ま、バカだから難しいと思うけど」
「……うるしゃい」
「あれ? 感じすぎちゃって、舌回んないの?」
 ペニスを掴んでない右手で、結城は俺の両ほほを掴む。動いてくれないと、中が熱くて耐えられない。早く動いてほしくなって、俺は「ひゃやく」とせがむ。
「俺のチンコ、気持ちいい?」
 素直に頷く。
「じゃぁ、俺を悦ばせてくれたらいいよ」
 そう言うと同時に、結城が頬から指を離す。まだ出会って三時間程度で、この人の趣味が、分かりますか? きっと、誰もわからない。ナニコレ。なんて言う拷問? 俺はきょとんとしたまま、結城を見つめる。そう言えば。
「結城しゃんのおちんぽしゅごいのおおおおおお………………………………」
 試しに言ってみた。結城は唖然とした顔で俺を見つめてから、大爆笑する。ああ、やっぱりエロゲはエロゲの世界で留めておかなきゃいけなかったんだな。つーか、別に言って欲しくてあんなこと言ったわけじゃなかったんだな。俺が真に受けたのがバカだったんだな。居たたまれなくなって、この場から逃げ出したくなる。帰りたい。家に帰りたい。
「マジで言うか、ふっつう! まぁまぁ、お前なりのリップサービスなわけね。分かった分かった。初回だから特別に、それで許してやるよ」
 やっぱり、普通の人は言わないのか。そんなことを思いながら、俺は結城から目を逸らす。自分から言い出してしまったため、反論なんか出来なかった。ただ、このとてつもない羞恥に耐えるだけ。ひどく辛い、ひどく。
 腰を掴まれると、体を反転させられ、腰を持ち上げられる。ケツを突き出した状態で突っ込まれ、体が自然と仰け反った。ちょっと痛いけど、それを上回るぐらい気持ちいい。本気でヤバイ。
「お、傷はついてないな。さすが俺」
 ケツの割れ目を押し開かれ、すーと風が通る。何をしてるのかと、頑張って首を後ろに向けると、結城が結合部をじろじろと見つめていた。動かしながら、そこをじろじろ見られてるのは、なんだかすごく恥ずかしくて、「やめろ……!」と呻く。んなところ見たって、みんなと一緒だろ! んな、ウンコ出すところ、みんな一緒だから。
「使ってないから、綺麗なんだよな。でも、俺のずっぽり銜えてて、超やらしい。中に入れたローションも出てきて、足に垂れてる。ちょーっと赤くなってたりするのが、余計にそそるな。ま、でも、使っているうちに汚くなっちゃうんだろうなぁ」
 言われた言葉が、頭の中で映像化される。突っ込んだところを見たことがあるから、映像はリアルだ。俺はいつも突っ込む側だったけど、今はされてるってだけで、すごく恥ずかしい。頭の中から映像が消えない。
「……やめ、んっ……、ちょ、やだ。いうなっ」
「ごめんね。俺、言葉責めダイスキなの。されるのも好きだけど。ねぇ、罵ってよ」
 結城の声が、耳元から聞こえた。お願いをする声は、低くてエロい。ドスの利かせた声や、笑ってるとき、からかってるときの声とはまた違う、脳を揺さぶるような声。
「るせ、へんたっ、い……!」
 その声に取り込まれないよう、必死に抗ってみたけど、体はもう、結城に屈服してた。奥まで突っ込まれるたび、目の前で何かが弾ける。結城は俺のケツの肉を広げたまま突っ込んでるから、既に何回かイってしまっている。それでもなお、勃起してんだから、相当気持ちいいのか、媚薬がかなり強力なのか、もうどっちでも良かった。
「その変態に突っ込まれて悦んでる奴はどこの誰だよ、オイ」
 力強くケツを叩かれる。痛いけど気持ちよくて、言葉なんて発することが出来なかった。あ、とか、ん、とか、一言しか漏れない。
「ん、久々だから、イきそうだな」
 結城の動きが早くなる。腰を掴まれて無理やり動かされてる状態だから、何がなんだか分からなくなっていた。イくならさっさとイってくれ。そんな風に思いながら、俺は無意識に力をこめていた。
「ん、締めんな。ッ、イくわ」
 中に何かを出されてる感覚で、俺はハッとする。少しだけ意識がぶっ飛んでたようだった。かちゃかちゃと金属の擦る音が聞こえて、ようやく両手が解放される。手錠のくっきりと残っていて、若干血が滲んでいる。全然、気付かなかった。頭の中がボーっとして、何も考えられない。疲れて、そのまま目を瞑ろうとしたとき、肩を掴まれ仰向けにされる。なんか、結城がニヤニヤと笑ってる。そして、そのまま顎を掴まれキスされた。キスってよりも、なんか唇食われたって感じでとても荒々しい。でも、上手くて、俺はされるがまま、力を抜く。
 正直、疲れた。
「あぁあ、なんか俺ばっかりがサービスした感じだな」
「……え」
 意味が分かんなくて目を開ける。ペロリと唇を舐められ、結城が離れていった。服を調えて、ずらしたズボンを履いてる姿を見ていたら、なんだか全裸な俺が滑稽に感じた。
「リップサービスって言うのは、今みたいなのを言うんだよ。覚えとけ、バカ」
 あぁ、わざわざべろちゅーまでしてくれて、どうもありがとうございました。俺はそんなことを思いながら目を瞑る。もうダメだ、眠いし体がだるい。丁度良く、かゆいのも無くなったし、このまま寝かせてほしかった。ここ数日、ボコられて寝れなかったし。
「……おい、寝るなよ。ったく」
 額をパシンと叩かれたけど、俺はそのまま熟睡してしまった。
 これから身に降りかかる試練など、知らずに。

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